候補選び「期限」間近/沼津市
2008年08月21日(朝日新聞静岡県版より)
斎藤衛市長の引退に伴い、水面下で駆け引きが続いている沼津市長選の候補者選びが最終コーナーを回った。現職官僚や県議、元参院議員、元県幹部らの名が挙がっては消えたが、これまでに市議と元衆院議員が立候補を表明。有志の市民団体も候補者擁立を目指す。告示が10月に迫るなか、独自候補擁立を目指す民主党や、斎藤市長とその座を争った元市長の動向に注目が集まっている。(菅尾保)
最も早く立候補を表明したのは沼津市議の加藤元章氏(44)。斎藤市長が引退を正式表明する約1カ月前の5月末には、議会関係者らに意思を伝え、所属していた会派「フォーラム21」を離脱した。しかし、「斎藤与党」の同会派には「市長が『やめる』という前に『出る』というのは信義違反」との反発もあり、同僚議員の間で支援の広がりは鈍い。
今月11日に立候補を表明した元衆院議員の栗原裕康氏(59)は、防衛庁長官などを務めた自民党の栗原祐幸氏の長男。00年、03年の衆院選に続けて敗れ、沼津市中心部の商店街でマグロ丼などを出す飲食店を経営してきた。
栗原氏は斎藤市長の去就が注目されていた5月ごろから立候補を検討していたが、「どんなメンバーになるか、状況をみていた。ここでの表明は時間的リミットと判断した」という。
「1杯500円ほどのマグロ丼を売っていて、千円、2千円を稼ぐことがいかに大変か分かった。選挙に落ちて多くの人が離れていき、『過去の人』かもしれないが、もう一度政治の世界で貢献したい」と話す。
一方、自民党県議の多家一彦氏(60)は7月末には立候補の決意を固め、関係者にあいさつ回りまでしていたが、最終的に断念した。多家氏は「ルビコン川をじゃぶじゃぶ渡っていたら、後ろから引っ張る人がいた。よーく見ると最初に出馬を薦めてくれた人だった。沼津は難しい」。
現在、候補者を模索する動きをみせているのは、沼津駅高架化反対派の市民や市議を中心とする「CHANGE!沼津2008」と、元市長の桜田光雄氏(62)。さらに、斎藤市長後援者らによる「後継」探しと、民主党だ。
「CHANGE」は今月7日に公募した候補者を発表する予定だったが、応募が3人しかなく、延期。元参院議員への打診も実らなかった。幹部の一人は「急ごしらえで、応募者の人物像も能力も分からない。最後は市議の誰かに詰め腹を切ってもらうしかない」と話す。
斎藤市長と後援者らはこの春から「後継者」を模索してきた。しかし、沼津市出身の高級官僚や元県幹部への打診は不調に終わり、後継づくりを果たせないまま引退表明をすることになった。いったん断られた元県幹部に再打診しているが、「60代後半という年齢で、難しいのでは」(後援会幹部)という。
市議会の斎藤市長与党会派の議員25人でつくる「政策研究有志議員懇話会」は一時、議員の一人を「統一候補」として擁立しようとした。だが選挙戦の核になるはずの労組の協力を得られなかったことなどから断念。21日にも全体で集まり再度可能性を探るが、メンバーは「自民系も民主系もいるのでなかなか難しい」と明かす。
元市長の桜田氏は「私はもう過去の人。私自身も周りもその気は全くない」。しかし、桜田氏に近い人物は「強力な支援団体が現れれば可能性はある」と望みをつなぐ。
民主党陣営は「総選挙が近い中、自民党衆院議員だった栗原さんには乗れない。独自候補を立てたい」(渡辺周衆院議員の後援会幹部)と話す。ただ「現時点で可能性がある人がいるわけではなく、残された時間で最善を尽くしたい」というのみだ。
斎藤市長が初めて立候補した12年前、立候補表明は選挙まで1カ月余に迫った10月初めだった。10月19日の告示日までは2カ月足らず。各陣営とも「8月いっぱいがリミット」とみている。